QSE

エネルギー物理工学講座
核融合・電磁工学分野 (橋爪・伊藤(悟)・江原・程・宍戸 研究室)

研究の最前線から
分割型高温超伝導マグネットを発案し、
その設計と開発に研究室を挙げて取り組む。

巨大な超伝導マグネットを分割するという斬新な発想が新たな可能性を導きだす。

 核融合炉の心臓部にあたる炉心では、重水素核と三重水素核をプラズマ状態にして、1億度以上の高温下で核融合反応を起こさせます。ところが、現在の技術では1億度に耐えられる容器の材料は存在しません。そこで、荷電粒子が磁力線にまきつく性質を利用して磁場にプラズマを閉じ込める核融合炉が考えられました。これを磁場閉じ込め型核融合炉と呼びます。

 核融合炉内に強力な磁場をつくる超伝導マグネットは巨大、かつ複雑な構造をしているため製造コストが高く、また炉内機器へのアクセスがしにくいため、メンテナンスの面で不利であるといった課題がありました。そうした課題を解決する技術が、橋爪先生の考案した分割型高温超伝導マグネットです。超伝導体はある温度以下で電気抵抗がゼロとなる特長を持ちますが、マグネットを分割すると、接合部分に抵抗が発生してしまいます。そこで、接合面や超伝導体の構造最適化、冷却方法の高度化など、工学面からのアプローチにより、この難題を克服すべく研究を行っています。

研究の最前線から

伊藤先生が製作した分割型高温超伝導マグネットのプロトタイプ

研究の最前線から

極低温冷媒の冷却法高度化のための実験

高温超伝導導体の実験で、世界トップクラスの成績を収める。

 現在の核融合実験装置では、液体ヘリウムで絶対温度4K(摂氏マイナス269度)に冷やして用いられる低温超伝導体が採用されています。しかしながら橋爪先生の考案した分割型高温超伝導マグネットでは、高温超伝導導体と低抵抗の導体接合技術が必要となります。本研究室で開発してきた導体接合技術を、核融合科学研究所と共同で製作した大型高温超伝導導体に適用したところ、核融合炉に適用できるレベルの低抵抗が実現できることが確かめられ、絶対温度20K(摂氏マイナス253度)で10万アンペアの通電にも成功しました。これは、世界でもトップクラスの性能を誇るもので、核融合炉の実用化へと大きく前進した画期的な技術です。

 また、こうような大型高温超伝導マグネットの製作技術はリニアモーターカー、医療用加速器、NMR/MRI、送電ケーブルなど産業用の高温超伝導機器に対しても革新的な製造方法を与えられるものとして期待されます。

 橋爪先生は「社会の役に立たない研究は、意味がない。」と言います。そのために、「言われたことだけしかできない思考停止の人間ではだめだ。自ら考え行動できる研究者であってほしい。」と常に言っています。本研究室の魅力が、そこにあります。

研究の最前線から

核融合科学研究所・超伝導マグネット研究棟で大型高温超伝導体サンプルを製作する様子

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