QSE

粒子ビーム工学講座
放射線高度利用分野 (人見・野上(光) 研究室)

研究の最前線から
半導体結晶を自ら育成し、新しい放射線センサーを開発

室温で動作する半導体ガンマ線センサーの開発をめざす

 ガンマ線を計測する場合、その検出媒体としては高い密度を持つ固体が理想的です。固体を用いた放射線センサーの中で代表的なものの一つに、半導体センサーがあります。半導体センサーはガンマ線などの放射線を半導体結晶中で電子・正孔対に変換して電気信号を得ます。半導体センサーは放射線を直接電気信号に変換するので優れたエネルギー分解能を示します。また、電極を微細に加工することができるため、半導体センサーはPositron Emission Tomography (PET)やガンマカメラといった高い位置分解能を必要とする放射線のイメージング応用に適しています。

 しかし、広く使用されているゲルマニウム半導体センサーは液体窒素温度への冷却が必要であるという欠点を持っています。そこで、化合物半導体を用いた室温で動作するセンサーの開発が求められています。当研究室では室温で動作するセンサーを実現するために材料開発からセンサー製作、評価までを一貫して行っています。

新しい化合物半導体、臭化タリウムを用いたガンマ線センサー

 当研究室では化合物半導体の一つである臭化タリウム(TlBr)に特に着目し研究を行っています。TlBrセンサーの最大の特徴は高い検出効率です。TlBrは原子番号がタリウムで81番、臭素で35番と大変高く、密度もまた鉄と同程度の7.56 g/cm3と非常に高いものとなっています。TlBr結晶のガンマ線吸収係数は半導体材料としては最高クラスの値となっています。

 我々は高純度のTlBr結晶の育成に成功し、室温で動作するガンマ線センサーの開発に成功しました。我々の開発したTlBrセンサーは世界最高のエネルギー分解能を示し、ゲルマニウムセンサーに迫る性能を示しています。我々はこの新しい化合物半導体を用いたガンマ線センサーを次世代の半導体PET装置やガンマカメラなどへと応用し、放射線の高度利用の推進を目指して研究を行っています。

研究の最前線から

(左) TlBr結晶・(右) TlBr結晶を用いたピクセル型ガンマ線センサー

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